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中秋の名月に想うこと

秋になり、ゆっくり空を見上げ

宵の暮れ行く様子や月の輝きを見ていると、

おのずと願望と言うか、叶えたい未来を思い描いたりします。

 

 

 

 

今回はそのお話をしますね。

私の琵琶に対する夢のお話です。

 

 

 

先日、千葉県我孫子市在住の師匠のお稽古のお帰りに、

東京虎ノ門にある琵琶のお店、石田琵琶さんに寄りました。

 

そして人間国宝の石田不識さんとゆっくりお話しをしました。

琵琶についてのことです。

石田さんはおっしゃっていました。

 

『琵琶の材料である桑の木はあと10年分しか手元には無い』と。

 

ですので、10年後にはもう桑の素材の琵琶は作られなくなるということです。

 

桑で出来ている琵琶は、薩摩琵琶と筑前琵琶(筑前琵琶はオモテ桐、ウラ桑)です。

私の演奏する琵琶も薩摩琵琶が由来ですので、材料は桑です。

 

 

なぜ桑でなければならないのか。

それは「響きが良い」ということ。

次に「硬い木である」ということ。

 

撥を激しくかき鳴らす『くずれ』という演奏方法があるのですが、大きな撥で琵琶の腹板をはたいたりもします。

木にある程度の強度が無いと撥により損傷してしまいます。

その点からも桑の木は最適なのです。

 

そして、琵琶の材料とされている他の木(花梨、栗、紫檀、黒檀、欅)と比較しても、桑の木は断然に音の響きが良いのです。

 

 

琵琶に使う木は樹齢が80年以上必要です。

それほど太い桑の木ってご覧になることは少ないですよね。

 

ですが、実は伊豆諸島の御蔵島樹齢80年以上の桑の木が、まだあるとのこと。

しかも琵琶材に適した良質な(虫に喰われていない)桑の木です。

 

ところが、残念なことに伐採する方が御蔵島にはもういらっしゃらないのです。

 

桑の木があっても切る人がもう居ない。

悲しい現実です。

 

 

 

しかし、諦めたらそこで終わりですよね。

なんとか琵琶を絶滅させないために、この楽器を次の世代に繋げるために私が出来ること…

 

 

まずは一人でも多くの方に琵琶の存在を知っていただき、

琵琶の生の音色をお聞きいただく。

 

そして、『琵琶に触れてみたい、弾いてみたい』と興味を持っていただく。

 

 

 

 私は縁あって琵琶に出会い、この楽器の素晴らしさを知り、琵琶と生きる喜びを知りました。

 

絶滅なんてさせたくないです。

子供たちにもこの楽器を知って貰いたいです。

私のように、琵琶から喜びや幸せを感じられる方もきっと居るはずです。

 

 

『琵琶の魅力を一人でも多くの方に伝える』

『琵琶を次の子供たちの世代に繋げる』

 

 

私の残りの人生、決して諦めず、夢を叶えたい。

 

そう心に想い、月を眺めた夜でした。